大前春子(篠原涼子)は、時給3500円でウルトラ能力の高いスーパー派遣だから、見ていてホント小気味いい。しかし、2話でクローズアップされた新入社員の派遣、小夏[山本舞香)を見ていて、その境遇に思わずうーんと唸ってしまった。
派遣先はS&Fという食品会社。蕎麦の名店「京橋庵」とのコラボ商品の開発企画に、社員一丸となって張り切って取り組むのだが、あくまで派遣は、その補助的業務をするのが仕事だという。
にもかかわらず、派遣会社に入社したばかりのフレッシュな小夏は、自分も斬新な企画を考えようとして張り切る。先輩派遣の亜紀(吉谷彩子)から「派遣は企画書を出したりしない」と教えられるが、まあいう事を聞かない。正社員の浅野(勝地涼)に、浅野の企画書として自分の案を提出して欲しいと頼み込む。これが結構ごり押しだったため、「ちょっと好感もてない新人派遣だなあ」と、最初はそう思った。
ところが!小夏は言う。「私、この会社落ちたんです。でもこの会社の仕事をやってみたくて、派遣で入ったんです」と。しかも商品開発をやってみたくて受けたと言うではないか。ここで、見ているこっちもなんだかモヤ~とした何とも言えない気分が胸に広がってしまった…
社会人としては、まずは派遣として指示された仕事を完璧にしたほうがいい。新人として先輩の亜紀の指導を無視するのもいかがなものか、とは思えど、企画を出してみたいという気持ちもわかるし、せつないっていうか、なんか辛い。
小夏は、そばつゆの味をお客様がカスタマイズできる「あなたのオソバ」という企画を出し、これが京橋庵の目に留まる。しかし、こともあろうが企画書の中に書いたS&Fという社名を、S&Tと間違えていることを、京橋庵から指摘されてしまう。
派遣先の会社名を打ち間違えるとは、派遣の風上にも置けないミスだ。浅野の名前で企画書を出しているため、浅野が上司の逆鱗に触れることになるが、その叱られっぷりを見ていられなかった小夏は「私のミスです。私の企画です」と思わずバラしてしまう。
ここでなぜ「浅野さんの企画を私が清書しました。私が打ち間違えました」と言えない!?と正直思ってしまったが、新人だから仕方がない。
しかし問題はここからだ。小夏の企画だと聞いた浅野の上司が、小夏に向かって「ハケンの分際で責任もとれないくせに」と激高する。ハケンの分際!?こんなこと言われていいのか!
ムカーっとした所で、大前春子登場!「仕事のできない社員にブンザイ呼ばわりされる筋合いはございません」と言って、シュレッターにかけてしまった企画書を、あっという間に書き直して小夏に京橋庵に向かわせる。さらに渋滞に巻き込まれた小夏のタクシーに自転車で追いついてプレゼンの時間に間に合わせ、派遣としての立場を守った形でプレゼンを成功させたのだ。ここで、やっと胸がスーっとした。
なんだかんだ言って、結局どんなドロドロ理不尽な話も、大前春子が毎回スーっとさせてくれるのが、このドラマのいいところ!
そして、もうひとつ!正社員と派遣との間の格差・差別が酷すぎることを、明るいコメディに乗せつつも、視聴者にしっかり届けることにも意味を感じる。テレビは幅広くあらゆる立場の視聴者が見ているから、胸に手を当ててくれる人もいるかもしれない。
〇「ハケンの品格」毎週水曜日夜10時