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「アトムの童」ゲームを全肯定する那由他(山崎賢人)の熱いスピーチは、ゲームを否定する親御さんにどう届いたか?

ゲームは年齢性別国籍を問わない。

お金のあるなし、地位のあるなし、家柄うんぬん、一切関係ない。諸々の感情を共有できるすばらしいもの。

株主総会の壇上で、フランクな言葉を交えながら、本音でぶつかった山崎賢人のスピーチは、けっこう観る人を惹きつけたのではないだろうか?

日曜の9時から10時。最終回の視聴率は10.2%。

録画してまで、また子供が寝た後にティーバーで観る時間やエネルギーを持たない人々も、日曜の夜には、テレビをつけていたかもしれない。

みんなの感想によると、スピーチの内容に「今更」という感じを持つ人も多いようだが、それは子供の頃から当たり前にゲームをしてきた層の感想だろう。

第6話では、おっかないPTA(小学校)のお母さんが、これでもかってくらいゲームを全否定し、嫌悪感全開で、那由他と対立していた。どちらかと言うと、こちらのPTAのお母さんに届いてほしいメッセージだ。

実際には、ここまでゲームを否定する親御さんもあまりいないだろうが、ゲームと勉強・スポーツをバランス良く両立させる、等という芸当はなかなか難しい。ゲームの魅力は強く、ハマると人生を変えてしまう魔力を持つ。

しかし、だ。

山崎賢人がスピーチで言うようなゲームの魅力と可能性を、心から理解できる親御さんの方が、ゲームとのうまい付き合い方を見つけやすいはずだ。

2017~2019年頃「ファイナルファンタジーXIV光のお父さん」というメディアミックス作品では、会話のない父子が、オンラインゲームを通して、正体を隠して友達になった。

自分はたまたま映画版を観て、坂口健太郎と吉田鋼太郎の親子のストーリーにほっこりしたが、ドラマ版(千葉雄大と大杉漣の親子)は、深夜も深夜、夜中の12時とか1時の放送だったので、子育て中の親御さんで観た人は少ないだろう。

その点、日曜の夜9時のテレビ放送なら、観た人の数は比較にならない。

ネットフリックスやアマゾンプライム等のオリジナルドラマに押されがちなテレビドラマであるが、マスメディアならではの訴求力がある。頑張ってほしい。

「アトムの童」は、2人の天才ゲームクリエーター、山崎賢人と松下洸平が喧嘩して分かれたりくっついたり、が忙しいドラマだった。

観るたびに、「あ、また喧嘩したのか」「あ、いま仲いいんだ」「なんだ、またペア解散?」などと言いつつも、毎週、大手インターネット検索会社や銀行、内部の裏切り者などにゲーム作りを邪魔され、ハラハラドキドキする物語でもあった。

特に、山崎賢人と松下洸平の二人の掛け合い、さんざん邪魔していじめてきたオダギリジョー、アトムの元社長の風間杜夫。社長の岸井ゆきの。その他、アトムの社員さんのいいキャラクター、いい雰囲気などで、いい職場だなぁ、という気分に浸らせてもらえた。その点は日曜劇場としては成功なのかもしれない。

世界のゲームプレイヤー人口が億に及ぶことを考えると、ゲームは可能性に満ち溢れている。6話で登場した、こどもたちの登下校の安全に寄与するゲームの開発。最終話で可能性を示した目の見えない人も楽しめるゲーム。ゲームには社会的役割を果たす力もあるはずだ。

また、今回はマスメディアとしてのドラマの役割を感じられたことが嬉しい。ほんの少しでもゲームの良さに気が付いた親御さんは、ゲームばかりしている(ように見える)我が子の良さに目を向けるかもしれない。

そして、山崎賢人・松下洸平が演じた天才ゲームクリエーターに憧れた誰かがいつか、本当にすごいゲームを作ってくれたら最高だ。

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