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「MIU404」塩顔二人のすばらしき本性が見えてきた!なぜ犯行に走るのか?心理の深堀りも興味深いドラマ。

最初は塩顔二人の刑事ドラマとして何となく見ていたが、回を重ねるごとに面白くなっていく。毎回少しずつキャラクターの魅力が深まり、4話ではついに、いい意味で二人の本性が見えた。「人間の本性は、死ぬかもしれないと思う瞬間に現れる」と言うが、まさにその通り。犯人から向けられたピストルを自らのおでこに当てて「撃ってみろよ、俺はいいよ」と言った時の志摩(星野源)。その状況を見つめる伊吹(綾野剛)の醸しだす緊迫感。その迫力に、思わずドラマであることを忘れて息を飲んだ瞬間だった。

一瞬でも判断を見誤ったら命を落とす仕事だということ。並みの信頼感では到底ペアは組めないということ。そしてこの二人なら大丈夫だと感じたのが4話だった。5話以降、二人の強い連帯感でますますドラマは面白くなるだろう。

このドラマで最も興味深いのは、「誰が犯人か?」というより、「犯人がなぜ犯行に走ったか?」という点が深堀されている点である。特に4話の「ミリオンダラーズ・ガール」の青池(美村里江)は切なかった。2年前に裏カジノに関わって逮捕され、執行猶予後はひっそりとOLとして生きていたが、ある日街中で拳銃で撃たれる(殺人未遂事件)。青池はこの事件では被害者ではあったが、自分自身も再び罪を犯していた。日々の仕事の中で、会社の金を一億円横領していたのだ。一億円ものお金を会社の引出に隠している割には青池の生活は貧しく、給料は14万円だった。

貧しくても、カジノや風俗で得たお金ではない。ハローワークから紹介されたまとも仕事で生計をたてていると自負していたのに、実は働いている会社は暴力団の関連会社だった。辛い。上司の指示で日々入金送金を繰り返す作業は、悪い仕事だった。まっとうに生きたいと願う、その手で悪い金を動かす仕事をしているのだった。

真面目に生きている事を心の支えに、半額のお総菜を食べながらテレビをみている。その画面には、私腹をこやす悪い政治家が映っている。そんな寒々しく物悲しいシーンから「汚いお金を自分が使って何が悪い」という横領の動機に至る青池の心の動きには、同情してしまった。もちろん横領という犯罪を肯定しているのではない。そうせざるを得ない気持ちにさせてしまった状況がとても悲しいと思った。

ただ、このドラマは、視聴者を寒々しく物悲しい気持ちで終わらせなかった。4話の最後は、映画「ボーン・スプレマシー」のラストを思わせる感動的な内容だった。

仮に無期懲役や死刑囚になるほどの犯罪をしてしまったとして、「死ぬ前に何か一つ、いいことがしたい」と考えること。自分に息のあるうちに、それを行動しようとすること。人間が100%悪人であることはむしろ難しいのだと思う。

命がなくなるほんの少し前に、善いことのために自分の手を動かした青池(美村里江)が「最後にひとつだけ」と言った時の顔が素晴らしかった。観て良かったと思った。

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