最初は、とんとん拍子に見える人たちの裏側を描くドラマなのかな?と
てっきり、そう思ってしまった。
でも違った。
エリートの裏側を暴くだけではない。
人にうらやまれる側にいるけど、本当は恥ずかしい人間だと自覚する登場人物たち。
彼らが、それぞれ人としてバージョンアップするドラマなのかな、と今は思っている。(7話現在)
明らかに気が付いている悪事と、気が付いていないふりをしている悪事、
それらを抱えて生きているんだとしたら、エリートはつらいはずだ。
そんな中、笑えるくらい急激にバージョンアップしていくのが岸本拓郎(眞栄田郷敦)だ。
岸本拓郎は、裕福な弁護士の家に生まれて、小学校から大学まで人もうらやむ名門校を卒業し、テレビ局に入社。
しかも、受験していないからね、彼は…。小学校受験はしただろうけど、優秀な弁護士の母が付き添っていたから断然有利。その後は、中学受験や高校受験はもちろん、大学受験ですらしていない。
あまり優秀にも見えない(失礼!)ながら、岸本の就職先は、超難関のテレビ局。
ここまで聞けば、まあ表面的には、充分にトントン拍子の人生だ。
が、実際には、フライデーボンボンという視聴率の低い娯楽番組の若手ディレクターで、ぼんやり仕事をしているもんだから、上司に怒られてばかりだし、ボンボンガールに鼻の下を伸ばしている情けない人生。
それでも、僕は勝ち組なんだ、ってママが言うから、僕は勝ち組。
そう思って生きていた僕ちゃんは、スタイリストにボンボンガールを口説いたことをバラすわよ!と脅され、死刑囚にさせられた松本さんの冤罪を晴らすべく、猛烈に行動をし始める。
自分を守るためのエネルギーったら、すごいんだな。
そこらへんは、僕ちゃんだってエリートと呼ばれる人種なんだ。
しかも、死刑囚の松本さんのことは心から「どうでもいい」と思っている呆れた人種でもあった。
しかし、僕ちゃんは覚醒する。
表面的には人もうらやむ人生の裏には、許せない自分がいた。
中学時代に自殺した友達。その両手が鉛筆で刺された傷でいっぱいだったこと、いじめられている事を相談されていたのに、誰がいじめていたか知っていたのに、先生に言えなかったこと。
言えなかったのは、いじめていたのが、学校でも一番の有力者の子供だったから。
自分で言えない拓郎は、弁護士のママに言ってくれと頼むんだけど、
ママは言ってくれなかった。
結局、友達を自殺の追い込んだ有力者の子供は、お咎めなしに生きている。
拓郎は中学生だったわけだから、本当は自分で先生に言ってもよかったんだけどね…。
大人が対応してくれていたら、友達は死なずにすんだかもしれないのに。
そんな記憶が、罪の意識が、拓郎を目覚めさせた。
最初は自分を守るためだけだったとしても、
長澤まさみに引っ張ってもらっていたとしても、
「行動」の効果はすごい。
人は行動することでバージョンアップする原料とか、エネルギーの素を得るのかな。
端的に言って、人をバージョンさせるものは何か?
拓郎の様子を見るに、それは「情熱」だ。
「情熱」などというものとは最も遠い場所にいた拓郎の内側で、
忘れていた罪の意識がふつふつと音をたてて膨れ上がって「情熱」に変わった。
拓郎の場合、最初の動機こそ不純だったかもしれないが、松本さんの冤罪を晴らす「行動」は加速し、長澤まさみを超えて突き進んだ。
拓郎のルックスや雰囲気は、短期間でガラリと変わった。
ひげは伸び、身なりも気を使っているとは言えず、汚い感じではあるが、
本人の魅力がおそろしく増している。
8話予告では、拓郎は苦しい立場に追い込まれ、
「マジで、世界ってわけわかんねぇ」とつぶやく。
なんとなくとしか言えないけど、
拓郎のお母さん、冤罪に加担しているような気がするな。
自殺した友達をいじめていた有力者の子供の名前を言わなかっただけでなく、
もみ消しに協力していたとか、大門副総裁の何らかの悪事に関わっていたりして。
女手ひとりで拓郎を育てながら、弁護士として年収1億あるってことは、結構なやり手だと思うし。
ママに守られて生きてきた拓郎が、覚醒して死に物狂いで真実を突き止めた結果として、
ママが悪事に加担していて、それが子供である拓郎のためだったとしたら・・・
真実は知らない方が良かった、
パンドラの箱は開けるべきではなかった、という結末になりうる。
しかしタイトルは「エルピスー希望あるいは災い」なのである。
真犯人が誰かってことより、
パンドラの箱を開けた結果、そこに何があって、
そこにどんな希望があるのか?ってことなんだろう。
公式サイトでは、主演の長澤まさみが一度失った価値を取り戻すドラマだと説明しているから、おそらく8話以降は、そこに焦点が行くはずだ。
~以下、妄想を含む~
それにしても、真犯人は瑛太じゃないと思うなー。
だってドラマが始まってまもなく視聴者に「真犯人はこの人ですよ」と教えるような流れは作らないでしょう、普通。
瑛太が真犯人なら、ドラマの前半ですでに視聴者は充分に想像できている。
大門副総理と瑛太の父の本城総一郎は幼なじみ。本城は地元では有力な建設会社の社長で、大門副総理の応援を随分しているらしい…とくれば、本城の長男の瑛太が真犯人なら、大門副総理が力を尽くして守るのは当然だからだ。
次回8話では、八頭山連続殺人事件が途絶えていた12年間、瑛太が12年間海外を転々としていた、と明かされるらしい。
こんなに簡単に真犯人を視聴者に教えるだろうか???
さすがに、ここまで簡単ではないだろう。
ならば、大門副総理の息子は?
そう言えば、今まで全く出てきていない。
もしかして、拓郎と同じ学校で、自殺した友達をいじめていた子供だったりして。
その子供には、人の手を血らだけになるまで鉛筆を突き刺す残虐性があるから、
その残虐性がエスカレートしたら、恐ろしいものがある。
そうなると、真犯人は中学生(当時)とかになってしまうから、それはないか?
いや、少年A(酒鬼薔薇聖斗事件)は、14歳だった。
生き物を殺す時に性的興奮が得られるという特異体質だったはずだ。
瑛太は映画「有罪」で少年Aかもしれない男を演じていた…
瑛太なら不気味な真犯人を独特の魅力で演じられるだろう。
うーん…やっぱり、瑛太なのか…?
……なんだか、妄想がとまらない。
「エルピス」はとにかく、あと3話ほどでラストを迎え、長澤まさみが「自分の価値」を取り戻すわけだが、
ほんと、自分の価値って何?
最終話では、そんなことを考えさせられ、視聴者にも希望が与えられるに違いない。
最後まで楽しみではあるが、
個人的には、人はバージョンアップできることを知り、
すでに、まあまあ希望を感じている。